【日本電線工業会】2019年度の電線需要見通し

銅電線の出荷見通し
70万7000トン(前年度見通し比0.9%増)

日本電線工業会の小林敬一会長は3月28日、2019年度の電線需要見通しを発表した。2019年度の銅電線の国内出荷量については、2018年度見込み比0.9%増になると見通す。(後日詳報)

会見の席上、小林会長は、今年度の活動を振り返るとともに、来年度に向けた指針を述べた。

小林会長

この1年を振り返ると、2018年度の日本経済は7—9月期に自然災害による一時的な下押し要因でGDP成長率がマイナスになったものの、政府の生産性革命や生産性向上のためのインフラ整備施策、堅調な省力化設備投資、米国を中心に海外景気が比較的堅調であったことを受け緩やかな回復となった。
しかしながら、後半は米中貿易摩擦の影響の顕在化や混迷するプレグジットの混迷(英国のEU離脱)など、景気の下押しリスク要因が一段と高まった年であったと思われる。
電線の需要は、最も大きなウエイトを占める建設電販部門で、五輪関係や首都圏の大型案件を中心に需要が回復、自動車部門も自然災害の影響はあったものの堅調な国内生産と電動化、自動安全システム等高機能化の進展により堅調な需要となった。一方で米中貿易摩擦、中国経済の減速影響を受けたと思われる電気機械、その他部門の需要は伸び悩んだ。このような状況の中で、2018年度の銅電線出荷見通しは70万トンをわずかに上回る70万900トンを見込んでいる。昨年秋の需要見通しから約1万2千トンの下振れとなる。
2019年度は、主力の建設電販、自動車は引き続き堅調で全体を押し上げると予測し前年度見通し0.9%増の70万7千トンとしたが、中国経済の減速や米中貿易摩擦の影響が電気機械部門の電装品分野や電子通信機器分野を想定以上に押し下げる可能性もある。昨年度に続き2年連続で前年に対し電線の物流量は増加するが、昨今の物流業界の働き方改革への対応、待機時間料や運賃と付帯業務料金の区分対応に荷主としての責務を一層進めなければならない。電線ユーザー、受け荷主の皆様には、社会に欠かせない電線の安定供給のためにぜひとも理解と協力をお願いしたい。
次に、先ほど来年度の事業計画案を審議したが、今年度の重点活動テーマとして取り組んできた環境対応、中小企業の支援、グローバル化への対応、商慣習の改善の4点は、いずれも引き続き重点テーマとして取り組むこととした。
環境対応の件は、今年度に低炭素社会実行計画の温暖化ガス削減目標を上方修正したが、来年度はこの目標値の着実な達成と業界内活動のさらなる拡がりに努める。
また、「環境と経済性を配慮した電線・ケーブルの最適.導体サイズ設計」の実用推進のための国際規格化の仕上げの年とする。
中小企業の支援については、「ものづくり革命」「人づくり革命」「働き方改革」などに関連する中小企業支援施策情報の入手と提供を、説明会などを通じて進めたが、来年度も引き続き実施する。それとともに、電線技術センター(JECTEC)と協業した技術・技能継承支援研修など研修事業の充実化を進め、私自身も時間の許す限り会員各社の皆様の声を直接伺い具体化を進める。
グローバル化の対応だが、世界情勢は昨年来の米中の貿易摩擦など年々予測の難しい状況が増しているが、電線業界においてはグローバル化が着実に進展し、多くの電線関連企業が世界を舞台に活動している。当工業会も、我が国電線産のグローバルな発展支援と国際的な視点に立ち世界への活動範囲を広げている日本の電線産業の姿を正しく伝えるためにグローバル統計調査と公表を行ったが、来年度も継続し充実化も図る。
商慣習の改善については、昨年度に作成した「取引基本契約書事例(案)」の会員に対する周知活動、取引強化月間等での説明会開催など関係諸官庁と連携した活動、定期アンケート調査をはじめとしたフォローアップ活動を継続する。
ここ数年、複数の業界でデータ改ざん等の品質上の問題が相次ぎ、昨年8月に当工業会の会員社でも不適切事案が公表されたが、電線工業会会員企業として品質保証体制を強化し、ユーザーに安心して使用いただける製品を提供するとともに継続的な品質管理の向上を図るべく「品質保証体制強化に向けたガイドライン」の策定を進めてきた。このガイドラインは、基本的な行動指針、経営層のリーダーシップ、試験・検査データの信頼性向上、再発防止と未然防止などの観点で取りまとめた。内容の公表は後日となるが、本ガイドラインの内容を展開・周知することにより、全社的な品質保証体制の強化と継続的な品質管理の向上に努めたい。
最後に、2019年度も、通商政策や国内外の動向、業界の課題に注意を払って対応する必要がある。当工業会では、各会員のこれらの活動支援を一層充実させたいと考えているので、引き続き支援をお願いしたい。

電材流通新聞2019年4月4日号掲載