LED光源を得て 一段の進化遂げる 『防災照明関連製品特集』

日本照明工業会 点検の必要性さまざまな形で訴求

もっとも、LED化したとはいえ、万が一の場合に備えて定期的な点検が怠れないのは従来器具と同様で、宝の持ち腐れとならないよう古い器具からの取替えが進むことを期待したい。
点検の必要については、日本照明工業会でもさまざまな形で訴求している。2004年からは、総務大臣登録の認定機関として消防法令にもとづく誘導灯の認定業務を開始している。認定器具は誘導灯器具(避難口)、階段通路誘導灯、客席誘導灯、誘導灯器具内蔵用電源装置、誘導灯器具表示板、誘導灯用信号装置、点滅形避難口誘導灯点滅装置、誘導音装置などとなっている。
業界にとって誘導灯における課題は、いうまでもなく古いものから新しい器具への取り替えの促進だろう。同工業会では、「全ての製造物は使用(設置)開始と同時に劣化が始まり、その進行により、いつかは機能不良となる。誘導灯器具および非常用照明器具の場合、法令で定められた定期点検報告制度があり、点検の結果、所期の機能が確認されれば引き続き使用することができ、次回の点検まで正常に機能することが期待される。しかしながら、劣化進行にともなって生じる機能不良はその時期をある程度予見できるものの、多くのものは突然不意に訪れる。専門家でもこれを正確に予測することは不可能で、使用している誘導灯器具や非常用照明器具の劣化進行による不意の機能不良を避けるためにも器具の劣化状態を診断のうえ適切な交換・修理等を行うことを推奨する」と事故防止の観点から新しい誘導灯への取替えを推奨している。劣化診断のツールとしては、「防災照明器具劣化状態診断チェックシート(簡易版)」の活用を提案し、劣化などが進んで不安全な状態にあることが判明した場合速やかに交換することを奨める。

いまもある鉄枠の誘導灯

イベントホールの古い誘導灯

CO2削減など社会貢献にも

ところで防災照明は、LED光源を得て機能の強化がはかられたといっても取替え促進のためにはさらなる周知の徹底が必要で、それがビジネスチャンスを広げ、ひいてはCO2削減など社会貢献にもつながることはいうまでもない。たとえば、部門別のエネルギー消費量でみると、産業・運輸が減少傾向にあるものの、一方で建築物は著しく増加し、全体の3分の1を占めるまでに上昇している。環境保全の観点からも、看過できない課題のひとつといえる。
一昨年5月には、東京都が東京メイヤーズ・サミットのなかで、大都市の責務として2050年にCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を実現する旨を宣言した。戦略としては、①気候変動を食い止める「緩和策」とすでに起こり始めている影響に備える「適応策」を総合的に展開②資源循環分野を本格的に気候変動対策に位置づけ都外のCO2削減に貢献③省エネ・再エネの拡大策に加えプラスチックなど資源循環分野や自動車環境対策などあらゆる分野への取組みの強化の3つを掲げる。
この観点から、さまざまな分野に焦点をあてていろいろな提案しているが、10年前と今日の家電製品を比較して取替えを推奨するのもそのひとつ。東京都によれば、2009年当時の1世帯あたりの電気使用量は年間で約4600kWhで、このうち照明器具は全体の約13%を占めていた。それが10年後の2019年には、約85%の省エネ化につながるなどLED照明への買い替えによる効果が如実に表れているという。もとより、この数値は住宅用のもので防災照明などが設置される施設用などと同日に論じることはできないが、エネルギー効率の悪い古い器具を使っていれば当然のことながら使用量の改善は望むべくもないのは、防災照明も同断である。
ある試算によれば、延べ床面積8千㎡規模の工場の場合、誘導灯を従来器具からLED器具に取り替えるだけでも年間の節電電力は約1.5kW、金額にしておよそ17万円にのぼるという。
話はそれるが、業界内で最近大きな問題となっているのが原材料不足である。メーカー各社は、材料が届かないため商品が製造できず、捌ききれない注文を抱え込む状況が続いていると悲鳴をあげている。看過できないのは、「商品が供給できないであれば取引を停止する」といった回答をつきつけられる事例も発生していることであり、事実ならばきわめて深刻な事態といわざるを得ない。
こうした不足を生む背景には、17のゴール・169のターゲットで構成する国際的な目標「SGDs」(持続可能な開発目標)に各社がこぞって取組んでいることにある。そのいかんによって、企業にとって死活問題となることが懸念もされているからだ。これが想定外の材料不足を惹起する要因のひとつとみられているが、SGDsへの対応は新規分野への進出や人材の確保につながるとみられるだけに至極当然の成行きでもある。それほどに、いまはSGDsへの関心が高く、いずれ防災照明もこの関連で見直される可能性が皆無とはいえない。
最近は、スマートな電気の使い方が求められている。この視点からも、防災照明の取り替えを訴求する余地があるように想えてならない。

 ■日本照明工業会・照明器具自主統計(LED防災用照明)
昨年11月は、出荷数量が前年同月比87.9%の30万2千台、出荷金額が同90.4%の99億9100万円となった。
11月累計(4月〜11月)は、出荷数量が前年同期比106.1%の245万7千台、出荷金額が同106.4%の784億7300万円となった。
ちなみに2020年度は、出荷数量が前年度比90.7%の375万5千台、出荷金額が同91.4%の1196億6700万円となった。