11月9日は「いい空気の日(換気の日)」 第31回「換気の日」座談会

出席者一覧

全日本電気工事業工業組合連合会
五十畑正美氏(常任理事・事務局長)

全日本電設資材卸業協同組合連合会
深瀨 和彦氏(副会長)

全日本電設資材卸業協同組合連合会
宮軒 治雄氏(事務局長)

パナソニックエコシステムズ株式会社
髙橋 正人氏(IAQビジネスユニット 営業部営業企画課 係長)

東芝キヤリア株式会社
宮崎 貴士氏(換気機器部 換気システム営業担当グループ長)

三菱電機株式会社
赤木 秀亘氏(中津川製作所 営業部電材営業課 課長)

本紙主筆 山田 剛

【座談会の主なテーマ】
(1)換気扇市場について(新設住宅着工戸数を踏まえて)
①メーカーから見た現状と今後の見通し
・各種換気扇の動向(パイプ用ファン、ダクト用換気扇など)
②工・販各業界における市況動向
・電気工事業界から見た現状と今後の見通し
・電材卸業界から見た現状と今後の見通し

(2)換気扇に対するニーズ(メーカー・工事業界・電材卸業界)
①清掃性(油汚れ対策)
②機能性(花粉・PM2・5対応、DCモーターの採用)
③静音性(騒音対策)
④施工性(簡便取り付け)
⑤利便性(使い勝手)
⑥意匠性(デザイン・コンパクト化)
⑦その他

(3)換気扇の機種構成比率
①パイプ用ファン
②ダクト用換気扇
③熱交換型換気扇
④浴室換気乾燥暖房機
⑤一般プロペラ扇、レンジフードファン、有圧扇
⑥その他

(4)換気扇の需要開拓
①新設・新規需要
②取り替え・買い換え需要(リフォーム・リニューアルなど)

(5)新商品の提案(ZEH達成基準)
①パイプ用ファン
②ダクト用換気扇
③熱交換型換気扇
④浴室換気乾燥暖房機・エコミスト(ミストサウナ付き)
⑤その他(レンジフードファン・IH対応扇、一般プロペラ扇、有圧扇など)

(6)換気扇市場の課題
①高付加価値化(HEMS及びZEH対応)
②浴室換気乾燥暖房機の事故後の取り組み(全日電工連報告)
③長期使用製品安全点検制度(来年10年目を迎える制度に対して)
④その他

(7)換気扇の流通ルート
・電材ルートでの販売対策

(8)今年の「換気の日」啓発活動について
・ホームページによるPR

電材流通新聞社は9月4日、11月9日の「いい空気の日(換気の日)」に合わせて31回目となる「換気の日座談会」を都内のホテルで開催した。全日電工連ならびに全日電材連、パナソニックエコシステムズ、東芝キヤリア、三菱電機から実務担当者が参加し、換気扇市場の動向やメーカー各社の事業展開、さらに今年の「換気の日」の取り組みについて話し合った。
座談会は、①換気扇市場の動向②換気扇に対するニーズ③換気扇の機種構成比率④換気扇の需要開拓⑤新商品の提案⑥換気扇市場の課題⑦換気扇の流通ルート⑧「換気の日」啓発活動など、業界に介在する諸問題について討議した。

——最初に換気扇の市場動向について伺いたいと思います。高橋さんからお願いします。
髙橋 振り返って見ますと、いまから10年前の2008年のリーマンショックの翌年、皆さんもご存じの通り住宅着工件数が25%のダウンとなり、それに伴って換気扇需要も15%程度の落ち込みとなりました。要するに、換気扇市場は住宅着工数に大きく影響を受ける位置づけにあります。
住宅に関する直近の環境を見てみますと、消費税増税が来年10月に予定されています。2014年4月に8%に引き上げられた際には、住宅に関しても駆け込み需要がありました。新設着工が約10%伸びました。
翌年には反動はありましたが、住宅着工数及び換気扇需要については大きな伸びとは言えないものの、着実に回復してきております。
来年の消費税増税に伴う住宅着工の伸びは前回の増税時ほどではないと想定しますが、当社としては、今年度着工数は前年度比103〜104%の97から98万戸程度と見ています。年度後半は先ほど申し上げたように、駆け込み需要も少しずつ出てくると予想しています。
一方、換気扇需要は今年度に入って、スタートは良かったのですが、第2クォーターから少々厳しくなってきています。後半は、住宅着工の駆け込みの影響で少しは期待できるのではないかと見ていますが、前回のような大きな伸びはないと想定すると、需要拡大のためには様々な取り組みをしっかりと仕掛けていかなければならないと考えています。
業界の換気扇需要を商品別に見ると、ダクトファンが前年より若干落ちましたが、パイプファンは着実に伸びていますし、今年度も100%を少し上回るのではないかと見ています。
その他では付加価値の高いバス換気乾燥暖房機やレンジフードファンといった商品が前年度比104〜5%と少し高めの伸びになっています。新築住宅頼みの時代はまもなく終わると考えますと、取り替えやリフォームといった切り口での提案が重要になってきます。当社としましても、この切り口での商品開発と提案営業にしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

——赤木さんはいかがですか。
赤木 弊社としましては、住宅着工は前年比微減の約94万戸を想定しております。
これに伴う換気扇の需要ですが、住宅着工減の動きはあるものの、「安心R住宅制度」の施行による中古住宅流通の増加を期待。中古住宅の売買の前後で行われるリフォーム需要の増加を想定し、前年並みでの需要予測をしております。
住宅着工需要に沿いパイプ用ファンは住宅着工動向に、ダクト用換気扇は住宅用よりも非居住用途での採用率が高いため、こちらの動きによっての需要変動を想定します。一方、昨今のZEH化の加速に伴い、空調負荷が軽減される一方で、更なる省エネ化に向けては第一種換気の重要性がクローズアップされ、全熱交換機の需要が増すと考えています。

——同様のテーマで宮崎さんお願いします。
宮崎 当社としては、18年度の住宅着工は、戸建てが横ばい、賃貸・マンションは減少し、前年比98%の93万戸程度まで落ち込むのではないかと想定しています。
一方、換気扇の需要は2016年度で前年比101.6%の640万台、2017年度も646万台ということで前年比101%となりました。今期の換気扇の需要としては、住宅着工が減少してはいるものの、工業会ベースでは7月まで99・7%とほぼ前同をキープしています。非居住の建築物件の設置、リフォームなどの需要に下支えされていることから、今後も換気扇の需要としては前年並みに推移するのではないかという期待を持っています。
種類別に見ますと、ダクト用換気扇は2016年度が前年比102%、2017年度が前年比100.5%。パイプ用ファンは2016年度が前年比102%、2017年度も前年比102%となりました。当社としては、どちらかというと戸建ての方が強いということもありまして、パイプ用ファンの方が伸長しているのではないかと見ています。
市場環境の中で、ZEHや省エネ、快適な空気の質を提供するといったキーワードで提案できるような商品を開発していく必要があると考えています。

——そういった商品はあるのですか。
宮崎 省エネの機種としては、ダクト用換気扇でDCモーターの機種をラインアップしています。

——戸建てのルートとしては東芝ライテックさんということですか。
宮崎 東芝キヤリアとしましては、戸建てのルートは東芝ライテックさんの電材ルートが構成比が大きいということになりますので、このルートでパイプファンが伸びていくことを期待しています。

——五十畑さん、電気工事業界から見た現状と今後の見通しについてお話ください。
五十畑 電気工事業界全体としては、悪くはありません。組合員の話を聞くと、1割〜1割5分ぐらい完工高は上がっているのが実態のようです。その中で換気扇だけの調査をしたことはありませんが、恐らく取扱高はあまり変わっていないと思います。ということは、自分から提案するというよりは、住宅会社のスペックに頼ってやっていく。あるいは、リニューアルの場合も、どちらかというと、工務店さんからの依頼で換気扇を換える。つまり、自分からリニューアルなどの提案をしていないのではないかと思います。ですので、電気工事業界と換気扇の関係は以前とあまり変わっていないのではないかと感じています。

——電気工事業界自体は仕事が増えているのですか。
五十畑 そうですね。インバウンド効果もありますし、新しい事業もありますし、リニューアルの仕事もあるということで、仕事は増えています。
問題は人手不足です。ゼネコンをはじめ、建設業界そのものが人手不足になっていますが、我々電気工事業界も人手不足という範疇に入っています。2020年代には、第一種電気工事士が2万人足りなくなるという経済産業省の調査結果も出ています。第二種はなんとか補完できそうだということで、第一種対策を何とかしなければならないということが電気工事業界としての大きな課題となっています。
全日電工連としては、人づくり、業界づくり、仕事づくりの「3づくり」のベースを作っていこうということで、まず今年度は人づくりに焦点を当てて取り組んでいくということで事業を展開しています。

——深瀨さん、電材卸業界についてお話をいただけますか。
深瀨 業界としては恵まれているのではないかと個人的には思っています。その中で、今年については特にエアコン関係が爆発的に売れましたので、そのあたりでプラスがあったと思います。また、それに付随した商材もいろいろと出ていると思います。
換気扇については、五十畑さんがおっしゃったように、個別にはわからないこともあるのですが、住宅着工に影響を受けるのは当然なのですが、それがそのまま電材業界としての数字になるとは言えません。というのも、ルートが激変していることもあって、全需についてはそういう状況かもしれませんが、電材ルートにそのまま反映しているかといえば、クエスチョンの部分もあるのではないかと思います。
いまの建物というのは高気密・高断熱ということで、換気をしっかりとしないといけません。その辺の関連する付加価値商材をメーカーさんにお願いしたいですね。また、ZEHの問題もありますし、IoTによって空調も含めたコントロールをするものがどういう形で出てくるのか。AIなども含めてトータルで提案するメーカーさんも出てくるのではないかと思います。
そうなると、レンジフードファンなどの付加価値商材などがプラスになってくれれば、業界としてありがたいと思います。
それから、リフォーム関係の商材ですね。新築の場合はルートがかなり複雑ですが、リフォームやリノベーションになってくると、地元の工務店さんや電気工事店さんに落ちるケースも増えてくると思います。その辺に期待しています。
あとは、ちょっと話が変わってきますが、電気工事店さんの後継者問題が顕著になってきています。電材店の場合、30軒から40軒のお客様を持っています。その中でベスト3に入るようなお客様が辞めてしまうんです。会社の業績が悪いからやめるのではなく、後継者がいないからやめてしまうということなんです。個人的には非常に心配しています。

——宮軒さんはいかがですか。
宮軒 換気扇は、現状では流れ商品といった形になっていまして、配線器具などのように住宅着工と連動しているなかで100数%という状況ですね。ある意味では安定しているわけですが、爆発的な伸びはあまり期待できないのではないかと思います。
ニーズが変化する中で、宮崎さんがおっしゃったように、空気質の部分、換気にプラスしてエアコンなど含めた総合的な提案が必要になってきているのではないかと思います。換気扇単体では限界があると思いますし、省エネやZEHを含めた総合的な提案にいかに換気扇を乗せるか。それが今後の課題になってくるのではないかと思います。

——そのあたりについて、高橋さんに説明していただきたいと思います。
髙橋 私の属している部門もまさしく「IAQ」すなわち、空気質に関するビジネスユニットです。
換気だけを捉えますと、新鮮な外気を取り入れるもしくは、汚れた空気を排出するだけなんです。エアコンですと、涼しいとか温かいというように体感的にわかりやすいのですが、換気の効果はどうしてもわかりにくい面が多々あります。
しかし、住宅の高気密・高断熱化が進んできますと、実際にはいろんな影響が出てくるんです。
我々は室内空気質と言っておりますが、より具体的な空気の提案ができるように昨年度、春日井工場内に新たな実験住宅をオープンしました。2011年にオープンした換気や空気を目で見てもらう実験住宅に加えて、新設した住宅は実際に空気質を体で感じてもらう実験住宅です。例えば、換気のない部屋と最低限の換気のある部屋、熱交換形換気扇のある部屋がどう違うのか体感できるようになっています。まさに空質なんですね。
実際に体感いただいたお客様には、その違いをご納得いただいております。そのような提案が付加価値の高い換気機器の需要拡大のためには重要になってくると考えています。
宮軒 熱交換形換気扇とエアコンを併用することで省エネになるという見方があると思うのですが、それがなかなか知られていませんね。そういったことも訴求していくことが大切だと思います。
髙橋 まさにそうなんですね。熱交換換気はまずは省エネの側面ですね。昨年度オープンした実験住宅では、それに加えて健康という側面で換気と空質の提案をしています。
宮崎 やはり、機器だけではなく、システムで提案することが重要なんだと思います。当社としても、空調+換気という提案をしています。市場で必要とされているものをタイミングよく出していくことがメーカーの課題だと思っています。

電材流通新聞2018年10月11日号掲載