○はじめに
2018年12月から、いよいよ新「4K・8K」の衛星放送がスタートします。これによってさまざまなTV番組を、高精細でしかも臨場感あふれる映像で観ることができるようになるのです。
ところで、この「4K・8K」っていったい何?
電気工事の関係者なら、知っていて当然、知らないと恥ずかしいこの「4K・8K」について、今回はおさらいの意味も込めてご紹介したいと思います。
○「4K・8K」の基礎知識
簡単にいってしまうと、「4K・8K」とは次世代の映像規格のことで、現行のハイビジョンを超える超高画質の映像のことです。
「4K・8K」の「K」は1000を表す用語のことで、それぞれ4000、8000を表しています。
4Kは現行のハイビジョンの4倍の画素数、そして8Kは16倍の画素数。現在の2Kに比べて、超高画質になるのはもちろんのこと、立体感も加わってさらに臨場感を味わうことができるのです。
最先端の映像技術によって、映像の高画質化だけでなく、さらに4つの特徴が加わります。
1・広色域化
現在のハイビジョン放送よりも、表現可能な色の範囲が大幅に拡大し「実際に肉眼で見える色」に限りなく近い色彩表現が可能になります。これにより医療・美術などの分野での活用も期待されています。
2・画像の高速表示
現在は1秒間に30コマしか表示されませんが、最大で120コマの表示が可能になります。これによりスポーツなどの分野で、ぼやけず・なめらかな映像を観ることができます。
3・多階調表現
現在の1,600万階調から、約10億階調へと拡大します。これにより、色や明るさの変化がなめらかになり、より自然な映像になります。
4・輝度
輝度については、HDRの技術により、映像の明るさの範囲が大幅に拡大し、より現実に近い明るさの表現が可能になります。
このように魅力的な「4K・8K」ですが、ここにくるまでには技術者たちのたゆまぬ努力がありました。次にその開発の歴史をご紹介したいと思います。
○「4K・8K」開発の歴史
8Kの研究開発は、なんと20年以上前の1995年から始まっていました。
NHKの資料には、当初は「超高精度映像システムの研究開発」と記載されています。その当時は4K・8Kという名称はありませんでした。
開発当初の名称は「走査線4000本級映像システム」といいました。これは8Kの縦横の解像度が縦7680画素、横4320画素あり、横の方向の画素=走査線であるため。また当時はブラウン管がメインであったことも関係しています。ちなみに「走査線」という言葉は、現在ではほとんど使われていません。
2004年になって「スーパーハイビジョン」という名称に変更されました。しかし、これに対応するカメラは国内に2台しかなく、重量も80キロあり、実用には不向きなものでした。
2006年、NHK技術研究所の前に8Kカメラが設置され、所内でその映像をリアルタイムで見ることができるようになりました。とはいえその当時の装置は、まだ巨大なものでした。
1つのセンサーだけではスーパーハイビジョンの解像度に対応できないため、その当時のスーパーハイビジョンカメラは4板方式を採用していました。これがカメラが大型化してしまう原因だったのです。
その後、技術者たちはカメラの小型化に取り組み、2007年に単板方式のセンサーを開発。これによりモノクロながらカメラの小型化が実現したのです。
その3年後の2010年にはフルカラー単板方式のセンサーが一般公開されます。これは現在の8K対応カメラにも採用されています。
2011年にはNHKとシャープが共同開発した85インチの8K対応液晶ディスプレイが登場。そしてその技術は、現在もなお進化を続けているのです。
○政府ならびに総務省の取り組み
現在、政府としても積極的に「4K・8K放送」の推進政策を行っています。
総務省では、2014年2月から「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合」を開催し、同年9月に中間報告を発表しました。
それによると、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される2020年までに「4K・8K放送が普及し、多くの視聴者が市販のテレビで4K・8K番組を楽しんでいる」ことを目標に掲げています。
このロードマップに沿って、2016年にはBS放送による4K・8K試験放送が開始されました。総務省は2017年1月にNHK、ならびに民放11社に放送の認定を行なっており、今後はより多くの4K・8K番組を楽しむことができそうです。
○4K・8Kの衛星放送を受信するには
最後に、4K・8Kの衛星放送を受信するには、どうしたらいいかをご紹介します。
4K・8Kの衛星放送は、現在の衛星放送とは異なる規格で放送されます。しかし現在市販されている多くのテレビには、これを受信する機能が搭載されていません。したがって新しい規格に対応した受信機(テレビ・チューナーなど)を購入する必要があります。それ以外にも、衛星アンテナ・分配機・ブースター・ケーブルなども交換する場合があるのです。
これは業界として大きなビジネスチャンスといえます。
4K・8K技術における国内の潜在市場規模は約3.8兆円。国内の経済効果は約9兆円だといわれています。
しかしながら4K対応テレビの普及率はまだまだ低いといえます。最近のテレビの出荷台数のうち、4K対応テレビは35.5パーセントという調査結果もあります。まだ半分以下なのです。
政府・総務省の積極的な動きに対して、一般にはまだまだ浸透していないというのが現実です。
「4K・8K」の衛星放送スタートは、何十年に一度の大変革です。この機会に一般ユーザーに高画質テレビの美しさ・臨場感をアピールし、業界全体として「新4K・8K放送」を積極的にビジネス展開していきたいものです。