CIAJ 通信機器中期需要予測 2021年度〜 2026年度

情報通信端末販売やサービス 事業展開で市場は順調に拡大

情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)はこのほど、通信機器中期需要予測(2021年度〜2026年度)を公表した。

概要

2020年度の日本経済は新型コロナ禍の影響で大きく減速したものの、通信機器市場は、新型コロナ対策としてのテレワークや在宅学習にともなうトラフィックの増加による通信インフラ設備増強や、3G停波を見据えた巻き取り施策や5G端末への買替によるモバイル通信端末の需要増などのプラス要因によって、需要総額は3兆3011億円(前年度比2.9%増)となった。
2021年度の日本経済はワクチン接種などの感染対策により経済活動が再開されつつある中で、通信機器市場は、サプライチェーン停滞および半導体不足による供給制約などのリスクがあるものの、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進によるトラフィック増や5G基地局整備の本格化によって好調を維持し、需要総額は3兆4320億円(前年度比4.0%増)と予測している。
2022年以降もICTは、新型コロナ禍での対策を活かして、新たな感染症や災害が発生した場合でも個人の日常生活や通勤・通学、企業の生産・営業活動などの多様な社会ニーズに対応するために、5G、Beyond 5G/6GやAIの技術を使った新たな情報通信端末販売やサービス事業を展開し、情報通信端末で扱うデータの増加でますます増えるトラフィックを処理する光伝送などの通信インフラ・ネットワークの整備強化を行うことで、さらなる経済成長や生産性向上に向けた社会全体のデジタル化の推進に貢献する。通信機器市場は2026年に向けて拡大し、2026年度の通信機器市場の需要総額は、4兆362億円(2020年度比22.3%増)になると予測している。

2021年度の見通し

2021年度の通信機器の需要総額は3兆4320億円(前年度比4.0%増)、国内は3兆1096億円(同2.6%増)、輸出は3224億円(同19.7%増)と予測した。

1、コンシューマ関連機器
需要総額:1兆9383億円(2020年度比2.6%増)
モバイル通信端末は、買い替えサイクルの長期化や半導体不足の影響が懸念されるものの、3G端末からの買い替えや5G端末の購入増加によって、需要が拡大すると見込んでいる。
コードレスホン・パーソナルファクシミリ(複合機を含む)は、高齢者層の一定規模の需要は維持しているが、下降傾向が続くと見込んでいる。各メーカーは、迷惑電話防止機能・振り込め詐欺対策機能を強化しており、振り込め詐欺かどうか等を相談できる機能も追加されている。

2、ビジネス関連機器
需要総額:4025億円(2020年度比3.3%減)
ボタン電話装置・PBX・事業所用コードレスホンは、リプレイス需要が中心であり、新型コロナ禍によるワークスタイルの変革や半導体不足の影響を受ける機種もあって減少傾向が続くと見込んでいる。
ビジネスファクシミリ(複合機を含む)は、海外でのシェアが高いことから新型コロナ禍の影響を受けた海外景気の低迷によって輸出が減少し、需要総額も減少する見込みである。

3、インフラ関連機器
需要総額:6158億円(2020年度比18・1%増)
基地局通信装置、固定通信装置は、2020年度に新型コロナ禍の影響により先送りされた設備投資の実施、テレワークなどライフスタイル・ワークスタイル変革によるトラフィックの増加、本格化している5Gサービス向け設備投資の増加を受けて、需要が増加する見込みである。
デジタル伝送装置は、2020年度のGIGAスクールなど光ケーブル網の全国整備に合わせて増加した需要の反動によって減少に転じると見込んでいる。

4、インターネット関連機器
需要総額:3264億円(2020年度比0.6%増)
ルーター、LANスイッチ、光アクセス機器は、大容量コンテンツの需要拡大にともなうトラフィックの増加、老朽化した機器のリプレイス需要、新型コロナ禍によるワークスタイル変革の拡大による利用増などから増加傾向にあるが、LANスイッチ、光アクセス機器は半導体不足による供給制約というマイナス要因もあって減少する見込みである。

5、その他1〜その他4と通信機器用部品
需要総額:1489億円(2020年度比0.4%減)

中期展望

2026年度の国内の通信機器の需要総額は4兆362億円(2020年度比22.3%増)、国内金額3兆6961億円(同21.9%増)、輸出金額3400億円(同26.3%増)と予測した。

1、コンシューマ関連機器
需要総額:2兆4093億円(2020年度比27.5%増)
国内のモバイル通信端末は、3G端末からの買い替え需要、5G向け新端末の販売増による金額面の増加や、新型コロナウイルスの感染拡大にともなう非接触ニーズの拡大やIoTの普及を背景にIoT/M2Mモジュールの普及拡大による台数面での大きな増加などのプラス要因によって大幅に増加すると予想した。但し、2022年度は5G向け端末の低価格化によって単価が低下するため、金額は減少すると見込んでいる。
世界の携帯電話(スマートフォン含む)市場は、2021年には全世界的に新型コロナ禍から回復し、2021年後半から半導体不足による供給制約が懸念されているものの、2022年には供給力が上がると見込まれることから、先進国を中心とした5G端末への買い替え需要、新興国でのフィーチャーフォンからスマートフォンへのシフトが進み、2025年までは増加傾向で推移すると予想した。ただ、新興国市場の成熟化や5G端末の低価格化が進むことによって2022年以降は緩やかな増加に留まることから、2025年の売上は4356億米ドル(CAGR・4・5%増)になると予測した。
コードレスホン、パーソナルファクシミリ(複合機を含む)は、固定電話や紙媒体による情報伝達等の利用機会の減少に伴って今後も減少傾向が続くと予想している。

2、ビジネス関連機器
需要総額:3374億円(2020年度比18.9%減)
ボタン電話装置・PBX・事業所用コードレスホンは、更新需要が中心となっているが、ワークスタイルの変革に対応するため企業の音声コミュニケーション基盤の再構築が始まっており、代替サービスへの流出、例えば、クラウドPBXやFMCサービスの導入等により減少傾向が続く見込みである。
ビジネスファクシミリ(複合機を含む)は、電子メール等他の情報伝達手段の浸透による利用頻度の低下からの買い替えサイクルの長期化が進む中で、ワークスタイルの変革によるオフィス内業務の縮小、それにともなう事業所の縮小等も影響して、国内需要は減少すると見込んでいる。

3、インフラ関連機器
需要総額: 7985億円(2020年度比53.1%増)
デジタル伝送装置、固定通信装置、基地局通信装置は、5GやIoTを活用したサービスの普及によるトラフィックの増大、4K・8Kコンテンツ等大容量コンテンツの配信サービスの普及、データセンター需要の拡大にともなう大容量化・高速化、防災情報システム需要増などにより、引続きネットワーク設備の増強が進んで、需要が増加する見込みである。
輸出に関しては、2021年度に大きく増えて今後増大傾向が続くと見込んでいる。その背景には海外通信キャリアが機器調達リスク回避のために単一ベンダーに依存した機器の導入を見直したことなどがあり、今後のグローバル展開が期待される。

4、インターネット関連機器
需要総額:3420億円(2020年度比5.4%増)
ルーター、LANスイッチ、光アクセス市場は、5Gを活用したサービスの普及によるトラフィックの増加、IoT/M2Mの進展、クラウドサービスの普及によるデータセンターの新設・拡張、大容量コンテンツの需要拡大にともなう高速サービス利用増加にともなって設備増強のための需要を見込んでいる。その中で、競争激化による機器単価やポート単価の下落や、汎用的なハードウェアを利用した仮想化の進展、5Gサービスによる代替がマイナス要因となるが、一方で新型コロナ禍を契機に注目されたワークスタイルの変革にともなうDXの進展がプラス要因となることから、増加傾向が継続すると見込んでいる。

5、その他1〜その他4と部品
需要総額:1491億円(2020年度比0.4%減)

モバイル 信端末の国内金額

コードレスホン・パーソナルファクシミリの国内金額

世界の通信方式別スマートフォン販売台数

ビジネス 連機器の国内金額

インフラ関連機器の国内金額

インターネット関連機器の国内金額

新たに登場する機種・サービスの市場動向

1、概要
従来の通信機器中期需要予測では、固定・移動を含む電話、ISDN、専用線、インターネットサービスを中心にそのサービスを提供するための通信機器の動向を捉えてきた。
これからは、この通信機器を中心としたハードウェア面の進化だけではなく、光・量子などの技術面での進化、クラウド化・仮想化などのソフトウェア面での進化など将来に向け顕在化しつつある市場の変化も対象としていく必要がある。
対象範囲を広げる理由は、主として仮想化技術の進展によるところが大きく、従来は通信サービス・機能にはそれを提供する通信機器が個別に準備されたが、仮想化技術の進展により、サービス・機能をソフトウェアとして実現し、汎用機器(主としてサーバー)上で提供することが可能になったためである。
今後、仮想化によって汎用機器の一部としてソフトウェアで組み込まれる部分なども含めた対象範囲に関して市場動向を把握するために、通信機器・サービスの分野で新たに登場し今後の成長が期待される、あるいは今後登場することが見込まれる機種・サービスの動向を取り上げる。

2、対象機器・サービスの例
▽コンシューマ・ビジネスを支える分野としてのインフラ・インターネット分野
テラビット級光伝送装置、仮想化(クラウド)基地局、エッジデータセンター、衛星コンステレーション、IoTソリューション(自動運転/セキュリティ/脱炭素・カーボンニュートラル)、仮想化基盤構築/運用支援サービス、仮想ルーター・スイッチ、量子暗号通信やAIを活用したソリューション

▽コンシューマ分野
パーソナルxR端末(VR:仮想現実/AR:拡張現実/MR:複合現実)、コンシューマ向け据置型モバイルルーター、ホームロボット、ホーム音声・ホームネットワークソリューション

▽ビジネス分野
業務用xR端末(VR・AR・MR)、ビジネス向け据置型モバイルーター、業務用ロボット、業界IoT・ローカル5Gソリューション(工場・物流・交通・農林水産等)、ユニファイドコミュニケーション/コラボレーション

仮想化で一体化するネットワークと通信機能

電材流通新聞2022年1月20日号掲載