聞いてビックリ! 事業者のための 労働安全衛生“講座” ③

労働者死傷病報告 報告義務知らない人も


池上公一氏

 労働災害が発生したときの、事業主の報告義務をご存じですか。
労働災害により労働者が死亡したり休業したりした場合、事業主は、遅滞なく、その旨(労働者死傷病報告)を労働基準監督署に報告しなければならないことになっています(労働基準法施行規則、労働安全衛生規則)。「遅滞なく」というのは、休業日数が災害の翌日から数えて4日以上の場合、おおむね一週間から二週間以内とされています。
ここで、とくに問題と見られるのは、休業日数が4日未満の場合です。この場合は、3カ月ごとに、その間の労働災害をまとめて報告すれば良いことになっています。1〜3月発生分は4月末までに、4〜6月発生分は7月末までに、という具合です。ただ、報告の義務自体は、休業4日以上の場合と変わりません。死亡のように労働災害が重篤な場合は、結果として何らかの報告がなされるでしょう。ところが、休業日数が4日未満の軽微な場合は、どうでしょうか。
労働安全衛生トレーナーの池上公一氏は「おそらくみなさんは、報告の義務すら知らないのではないでしょうか。知らなければ、当然、報告はしません。でも、規則では報告しなさいと規定している。それに違反した場合は、罰則もあります」と注意を呼びかけます。
労働災害事故を報告しなかったり、虚偽の報告を行なったりした場合は、刑事責任を問われることがあるほか、刑法上の業務上過失致死傷罪に問われることにもなりかねません。場合によっては「労災隠し」として、社会的糾弾を受ける恐れさえあります。
なにより労働者死傷病報告は、それに基づいて労働災害の原因分析が行われるなど、労働安全衛生行政の推進に用いられているものです。事業主には、そういった方面への配慮も求められます。池上氏は「経営者は、労働安全衛生に対しては細かい気配りが必要」と諭しています。

電材流通新聞2018年9月13日号掲載