電設・ウォッチ! 第7回 電気工事業界における女性の進出と今後の問題点

アベノミクスの「女性活躍推進法」とは?

アベノミクスが提唱する「働き方改革」の一環として「女性活躍推進法」が平成28年に施行されました。また令和元年5月にはこの改正案が可決されています。

正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」というもので、女性が職場で活躍できるように雇用主である企業がバックアップすることを義務付けた法律です。

この法律によって、国、地方自治体、そして従業員数によって内容に違いはありますが、原則すべての企業が女性雇用促進の義務を負うことになりました。

要約すると次のようになります。

1・自社の女性活躍に関する状況を把握し、課題を分析する
2・そのための数値目標と行動計画を策定し、社内へ周知し公表する
3・行動計画を策定した旨を労働基準局へ届け出る

この法律に違反しても罰則規定はありませんが、届け出の有無は厚生労働省のHPに公開されるため、義務を怠ると企業イメージを損なうことにもなりかねません。

一方、女性の活躍を応援している企業には「えるぼし」マーク、子育てを応援している企業には「くるみん」マークが政府から付与され、企業イメージを高めることにつながります

参考女性活躍推進法特集ページより
出典:厚生労働省ホームページ
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html

 

 

「女性活躍推進法」によってだけでなく、近年は「人手不足解消」の観点からも、男性中心であった職場において女性を積極的に採用しようという動きが活発になっています。

建設業、運送業、宅配サービスなどがその代表ですが、電気工事業界も例外ではなく、近年は電気工事士として現場で働く女性が確実に増えています。

出典:内閣府ホームページhttp://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h29/zentai/html/honpen/b1_s00_01.html

電気工事業界で働く女性が増えた理由とは?

日本にはさなざまな業種がありますが、女性の比率がもっとも低いのは、電気・ガス・水道だといわれています。

電気工事業界はまだまだ男性中心の職場なのです。

しかし近年は「女性歓迎」「男女問わない」といった採用条件の電気工事会社が多くなっています。

なぜ女性を積極的に雇用するのかというと、次のような理由が考えられます。

1・あらゆる職場において性別に対する偏見がなくなりつつある
2・電気工事業界の人手不足を解消するため
3・顧客の高齢化世帯や単身女性世帯が増加しているから

近年はあらゆる仕事において、男女の住み分けがなくなりつつあります。

これまでは女性の仕事とされてきた看護師、保育士、栄養士などの職場にも男性が進出しています。

その逆もまた然りで、それが上記の建設業、運送業であり、電気工事業もそのひとつといえるのです。

業界の人手不足をチャンスととらえ、男女の垣根がない職場へと、すべての業種が変わりつつあるようです。

電気工事会社においても、求人募集をかける際に「無資格・未経験の方歓迎」といったケースが増えています。

令和元年10月より幼児教育・保育の無償化がスタートしました。これを活用して電気業界への就職を考える女性も増えそうです。

また近年は男性が家事・育児に積極的に参加するようになり、結婚後の女性の負担が軽減されたことも理由にあげられるでしょう。

いま電気工事会社が女性を採用する大きな理由のひとつは、高齢化世帯・単身女性世帯の増加だといわれています。

例えば一般住宅向けのエアコンの設置などの電気工事の場合、電気工事士がお客様の部屋に入って作業することになります。

その場合、男性よりも女性の方が安心できる、というお客様の声は意外に多いのです。

これからは、スマートハウスやIoT住宅への切り替えや、災害時の修理・点検の対応など、女性が活躍できる機会がますます増えそうです。

女性は一般的に仕事が丁寧で細かい気配りが得意です。

ひとつのミスが大きな事故につながりかねない電気業界において、そんな女性の特性が有効に活用できるのではないでしょうか。

電気工事士の資格試験は、筆記試験と実技試験があります。

性別・年齢・学歴などは関係なく、しっかり準備をすれば合格の可能性が高い資格試験です。

このことも女性が進出しやすい理由のひとつとなっています。

女性電気工事士の問題点は?

一方、女性の電気工事士が直面する問題点としては、まず体力面があげられます。

重い資材をひとりで運ぶとき、ペンチで配管・配線を曲げたり圧縮するときなどは強い力が必要です。

最近は弱い力でも使える工具が開発されているので、それらを使用してみるとよいかもしれません。

現場で男性に協力を求めることはできますが、やはり就職する際には女性がひとりで作業することを前提に考えたいものです。

また工事現場における問題点として、更衣室や女性用トイレの確保などもあげられます。これらは今後の課題として、業界全体で検討していく必要があるといえそうです。

電気工事会社に就職したものの、会社に女性は自分ひとりだけ、ということがあるかもしれません。女性同士の方が相談しやすい種類の悩みや疑問は、社外の友人・知人やSNSなどを活用するのもよいでしょう。

アベノミクスの「女性活躍推進法」ならずとも、女性の社会進出は日本全体の命題だといえます。

電気業界で活躍する女性が増えることは働き手が増えることでもあり、業界全体にとって歓迎すべきことだと思います。

受け入れる会社側の心構えとしては、以下のようなものがあるでしょう。

1・会社内、あるいは工事の現場においてトイレや更衣室などを改善し、女性が働きやすい環境を整える
2・入社時に資格を持っていない女性には、勉強方法や実技をアドバイスする
3・会社で責任のある立場の人間が率先して男尊女卑的な考えをなくし、男女同権を周知させる
4・経営者側が採用と定着、どちらも大切だということを肝に銘じること

女性を積極的に受け入れることによって、電気業界の活性化と人手不足解消を促進し、ひいては電気業界全体のイメージアップにつなげていきたいものです。

⚫︎参考ページ

工事士.com

https://www.工事士.com/denkikouji/36/

厚生労働省>女性活躍推進法特集ページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html

企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ>女性活躍推進法https://jinjibu.jp/keyword/detl/739/

内閣府ホーム >幼児教育・保育の無償化https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/musyouka/index.html

内閣府ホーム>第1節 働く女性の活躍の現状と課題http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h29/zentai/html/honpen/b1_s00_01.html