核融合発電の部材を増産 米・先端企業に納入開始

フジクラは2月28日、米国のコモンウェルス・フュージョン・システムズ(CFS)社に、核融合発電向けのレアアース系高温超電導線材の納入を開始し、同線材の生産能力を拡大していくと発表した。
CFS社は、マサチューセッツ工科大学のスピンオフ企業として18年に設立され、世界初の核融合商業炉の実現に取り組んでいる最先端の企業。核融合は太陽のエネルギーの源でもあり、燃料1㌘で石油8㌧を燃やしたときと同等のエネルギーを生みだせるとされている。核融合発電は、従来の発電と比較して二酸化炭素を排出せず、その資源は海水中に豊富にある。また、安全性などにも優れているため、エネルギー問題と環境問題を解決する技術として期待されている。
フジクラは、09年からNEDOの研究開発用に同線材を納入してきた。また20年から、核磁気共鳴装置(NMR)最大手である米ブルカー社に納入してきた実績もある。今回発表されたCFS社への納入開始も含め、基礎研究の進展により、今後も同線材の需要が増えていくことが予想されるため、同社は、佐倉市の工場にラインを増設する。生産能力を約2倍に増強し、25年までに計1千㎞以上を供給するという。
ある温度以下になると電気抵抗がゼロになる現象を超電導といい、液体ヘリウムを使って冷却する低温超電導(金属系超電導)と、液体ヘリウムを用いない温度でも超電導を示す高温超電導(酸化物系超電導)がある。
フジクラは、高温超電導が発見されて以来、世界トップレベルの研究開発を継続しており、現在は国内外に高性能なレアアース系高温超電導線材を提供し、高い評価を得ている。
レアアース系高温超電導線材は、ニッケル基合金などのテープ状金属基板上に、中間層を介してレアアースなどからなる酸化物超電導材料を結晶成長させながら成膜した超電導線材で、その特性は超高磁場中でも高く、次世代超電導機器実現のために普及が期待されている。

電線新聞 4310号掲載